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弁護士日記と不動産

弁護士歴40年超の弁護士が、日々の出来事、相撲、猫写真や不動産問題を語ります。

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法務省が、不正取引の温床となった中間省略登記を、事実上、禁止して久しい。
これにより、不動産ブローカーによる土地転がしを防ぎ、登記簿が正確に権利の変動を表すようになった。

しかし、不動産業界からの中間省略登記復活への要望は非常に根強く、業界の要望に応えるべく、弁護士や司法書士が、色々と工夫し、事実上、中間省略登記を認めさせるような契約方法を工夫しているようである。

せんだって、都内某所で不動産売買の決済に立ち会ったが、そこに来た司法書士さんの一人が、さかんに、この新中間省略登記をすすめており、立ち会った仲介業者の一社も、その効用を絶賛していた。
ネットで検索すると、この新中間省略登記に関する情報が氾濫している。「私どもの事務所は、新中間省略登記が得意です!!」という類の宣伝だ。どうやら、司法書士が、この新中間省略登記を使ってより多くの業務を受注しようとしているようだ。歯科医のインプラントみたいなものか。

ただ、この新中間省略登記に熱心なのは一部の司法書士で、多くの司法書士は、この新中間省略登記に慎重なようだ。「自分たちは、職業倫理から、新中間省略登記はしない」という話を、あちこちの司法書士から聞いた。新中間省略登記を積極的に展開しているのは、競争の激しい東京地区の、それも一部の司法書士に限られるようだ。

その仕組みは、こうである。
不動産がA→B→Cと売買された。この時、本来、登記はA→BとB→Cの二つの移転登記を行わなければならない。
しかし、新中間省略登記は、「第三者のためにする契約」と「他人物売買契約」を組み合わせ、Bの頭越しに、A→Cの直接移転登記を可能にしようとするものだ。その仕組みは、以下のとおりである。
1、 売り主Aは、たとえば代金1000万円で第一次買主Bに不動産を売り渡す。
2、 ただし、A・B間で、自ら所有権を移転させることなく、Aは、Bの指定する第3者に所有権を移転することを約す。(第三者のためにする契約―サンタメ契約)
3、 一方、第一次買主Bは、第二次買主C(エンドユーザー)に、代金2000万円で、Aという他人が所有する物件を売り渡す(他人物売買)。他人物売買でも、売買は債権契約としては有効だから、このような構成も可能である。
4、 決済にあたり、売り主Aは、第一次買主Bから売買代金1000万円を受け取るとともに、BもCから代金2000万円を受領する。
5、 所有権は、AからCに直接移転する。
6、 業界では、このような契約をサンタメ契約(第三者のためにする契約の略だろう)と言っているようである。

多くの司法書士が、新中間省略登記に懐疑的なのは、「これを認めると、結局、かってのようにエンドユーザーを欺罔する土地転がしが可能になるのではないか」ということである。「これでは、中間省略登記を禁止した意味がない、職業倫理から受け入れられない」というのが司法書士の多数派のようだ。

ただ、立ち会った不動産業者は、「この方法は、登録免許税や取得税を「節税」するだけが目的で、エンドユーザーCを騙すために利用することはない、必ずエンドユーザーに、A→B間の売買代金を教える」と言っていた。
もしそれが事実なら、あえて、この新中間省略登記を禁止する理由はない。中間省略登記の最大の目的は、業者による土地転がしを防止することだからである。

しかし、「A→Bの売買金額を知らせることなく、直接、AからCに移転登記できる」と堂々と宣伝している司法書士事務所も、相当数ある。これは、司法書士自らが、まさに「私どもは、詐欺まがいの土地転がしに協力します」と言っているに等しい。

法務局は、「このようなサンタメ契約の場合、AからCに、直接、移転登記をするのは、構わない」という見解を示しているようで、これが、新中間省略登記を勧める一部司法書士を勢いづかせている。

しかし、自分に言わせれば、これは根本的な勘違いがある。
そもそも登記は、外形にそって行われるし、登記官には形式的審査権しかない。形式に従って判断する限り、第三者のためにする契約と他人物売買契約を組み合わせた売買が行われるのだから、AからCへの直接移転登記を禁止する理由はない。これは、法務局の見解を待つまでもなく当然の話である。

しかし、「登記それ自体が有効かどうか」という問題と、その「登記原因となった売買形式を、そのまま裁判所や国税当局が認めるか」とは、全く別の問題である。
法務局が新中間省略登記を認めたのは、当然で、当たり前のことをいっているにすぎない。法務局は、契約の有効性や賠償責任の有無、課税問題まで回答しているわけではないし、回答する権限もないからである。問題は、裁判所や国税当局が、このサンタメ契約を、そのまま認めるかということである。

第一に、もし、業者が、売り主やエンドユーザーに第1次売買、第二次売買それぞれの売買金額を知らせることなく、このサンタメ契約をして土地転がしをし、後にそれを知った売り主あるいは第二次買主が、「騙された」と訴訟を起こせば、裁判所が、なんらかの賠償を認め、あるいは売買の無効・解除を認めるリスクはある。そうなったら、仲介業者や関与した司法書士は、責任を問われることになる。
本件でいえば、実は、2000万円の買主Cがいるのに、Aは、Bに1000万円で売買契約を締結させられている。Aは、はたして、この事実を知っていたのか?なぜ、このような不自然な売買をする必要があるのか、それを二次買主は、充分理解していたのか?
少なくとも、仲介業者は、この点を開示し十分説明しなければならない。
というのは、仲介業者は、取引に当たり、売買の重要事項を説明する義務があるからだ。
したがって、サンタメ契約全体の仕組みと金の流れ、この新中間登記の仕組みとリスクを十分取引当事者に説明しなければならない。これを怠れば、賠償責任を負うほか、営業停止を含む行政処分を受ける可能性が高い。逆に言えば、仲介業者は、この新中間省略登記を使用するには、相当のリスクを覚悟しなければならないということだ。

第2に、仮に、顧客に充分な説明をして民事上の問題をクリアしても、課税の問題は生ずる。新中間省略登記を勧めている司法書士や業者は、これを「節税」と主張しているが、これについて税務当局から正式な判断がでたわけではない。したがって、これは「節税」なのか、「租税回避なのか」という問題は、いまだに未解決である。
後者なら、悪質な課税として顧客が追徴を受けることになるし、これを勧めた仲介業者や司法書士も、何らかの処分を免れない。

そもそも、登記が形式を基準に判断するのに、課税は、実質に従って課税される。この点は、本当に大丈夫なのか。
しかも、サンタメ契約の「節税」問題は、印紙税や取得税だけでなく、譲渡所得税の問題も生ずる。というのは、かって、中間省略登記は、脱税にも利用されていたからだ。
例えば、A→Bの売買が1000万円で、B→Cの売買が2000万円のとき、Aは1000万円の売買価格を基準に譲渡所得税が課される。またBも1000万円で仕入れた不動産を2000万円で売ったことになり、1000万円の譲渡所得に課税される。
しかし、Bが、単なる藁人形の時、例えば、倒産して放置してある幽霊会社の時、国税は、税金を回収できなくなる。この中間省略登記を利用した脱税は、かなり利用された。
現在は、この新中間省略登記は、件数が少なく、社会問題化していない。しかし、かなり広く使われるようになると、租税回避だとして課税処分を課するリスクはある。
サンタメ契約をするときは、事前に、租税回避の問題が生じないか、国税と十分相談しておく必要がある。
仲介業者も、当然、この課税リスクが未解決であることを顧客に十分説明しておく必要がある。


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登記するとき、本人になりすまして、勝手に他人様の土地を移転登記する輩がいる。いわゆる地面師という連中である。
その人の印鑑証明と権利証があれば登記はできるし、仮に権利証がなくても、保証書があれば移転登記はできる。他人様の土地を勝手に名義変更するのは意外と簡単なのだ。ただし、これをやっても、無効な登記であるから所有権は移転しないし、何よりも、相当長期間、刑務所生活を送ることを覚悟しなければならない。地面師をして、執行猶予はあり得ない。
しかし、虚偽の登記簿を使って、融資名目や売買名目で、お金を騙し取ることができる。普通、登記簿を見せられたら、誰だってそれを信用するからだ。

こういう行為を防ぐために、法務省は、司法書士に、移転登記等の際、重い調査義務を課している。売り主が本当に本人なのか、司法書士が確認しなさいというのである。
しかし、いくら司法書士に調査委義務を課しても、簡単な登記なら、書式さえあれば素人でもできる。行政書士あたりに頼んで申請書式だけ作ってもらっても良い。
地面師の跋扈を完全に防ぐことはできないのだ。

こういう地面師の跋扈を防ぐ制度として、意外と知られていないのが「不正登記防止申出制度」である。

これは、不正な登記がされる差し迫った危険がある場合に利用されるものである。例えば、
本人の知らない間に不動産の取引がされていることが発覚した場合
第三者が不正に印鑑証明書の交付を受けたことが発覚した場合
などである。

利用するには、登記の名義人や相続人等が管轄法務局に所定の内容の申出をする。
不正登記防止申出の手続は,申出人(登記名義人等)本人が登記所に出頭することを原則としているが、本人が登記所に出頭できない止むを得ない事情があると認められる場合には,委任による代理人が登記所に出頭してすることもできる。

ただし、
市町村長に印鑑証明書の不正発行に関する相談をしていること、
警察に防犯上の相談をしていること、または告発の手続を取っていることなど、ある程度の具体的な行動をとっていることが、
原則として必要となる(平成17年2月25日法務省民二第457号の第1の2)。

この申出をすると、申出の日から3か月以内に当該申出にかかる登記申請がされた場合に、法務局から申出人にその旨の通知がされることになる。
ただし、申し出出があったからといって、直ちにその対象となる登記申請が却下となるわけではないので、その点には注意が必要である。

この地面師がらみで面白い判決がある。東京高判・平成24年04月17日が、それである。概要は、以下の通り。
AがB売却し、BがCに購入後ただちに転売する。Cは、自分が最終購入者であるから、融資をしてほしいとDに頼み、Dは、了解した。
   ↓
融資の際、司法書士が立ち会い、BにCへの売買意思確認をするとともに、必要書類をチェックし、これで問題なしというので、Dは、その司法書士の言葉を信じてCに融資した。
   ↓
ところが、司法書士が登記申請をすると、登記所は「Aが不正登記防止申出を行っていたことを理由に却下。
   ↓
DがあわててCやBに連絡を取ろうとしたが、融資したお金とともに行方不明。Aにも問い詰めたが、Aは、「自分は知らない間に移転登記された、CやBなんか知らない」と反論された。
   ↓
そこで、お金を騙し取られたDが、司法書士に、BからCへの移転登記の真正をチェックするだけでなく、なんでAからBへの移転登記の真正までチェツクしなかったんだ、騙し取られたお金を賠償しろと訴えた。

東京高裁は、連続移転登記における前々者Aの意思確認義務は司法書士にはないとして、Dは敗訴。(一審も同じ判断)。



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追伸
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