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ニャラリーガルはなちゃんのひねもすのたり日記

森法律事務所のトップに君臨するニャラリーガルハナちゃんとハナちゃんに従える下僕所長、それぞれの、ひねもすのたりのたりの日々を送ります。このブログで、社会に何かを発信しているわけではありません。

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仲介業者が不動産を1億円で買う買主を見つけてくれたので、売買契約を締結することになった。しかし、いざ、売買契約を締結する段になり、アナタは、仲介業者の仲介手数料を支払うのが惜しくなる。アナタは、売り主に電話をして、そっとささやく。
「買主さん、客見つけただけで、双方からあわせて6%+12万円なんて、べらぼうじゃないですか?1億円だから、買主見つけただけで612万円。私の年収と同じです。この契約キャンセルして、あとで二人だけでそっと契約しませんか」
買主は、「それもそうだ」といって、売り主とタッグを組んで、仲介業者抜きにして売買契約を締結した。
この場合、仲介業者は、仲介手数料を請求できるだろうか?
仲介手数料は契約を「成立」させたこと対する対価だから、「成立」がない以上、報酬は請求できそうもないが、世の中、そう甘くはない。結論からいうと、仲介報酬は請求できる。
というのは、一般媒介契約約款書には、「一般媒介契約の有効期間内又は有効期間の満了後2年以内に、依頼主が、仲介業者の紹介によって知った相手方と仲介業者を排除して目的物件の売買又は交換の契約を締結した時は、仲介業者は、依頼主に対して、契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求できる」との記載が、普通は、あるからである。業界では、このような行為を「抜き」行為というそうで、ちゃんと、契約書に対策はうってあるのである。

ただ、約款には、請求できるのは、「契約の成立に寄与した割合」に限られる。前述した例では、100%寄与があるといえるが、100%と言えないケースとは、どういう場合だろう?

これを扱った判例がある。東京地判 平24・11・16がそれである。

[事案の概要]
事案の概要は、以下の通り。

媒介業者Xは、買主Yとの間で、平成22年9月6日、一般媒介契約書に基づき、本件媒介契約(契約締結後3ケ月H22.12.5まで)を締結した。
  ↓
売主と買主Yは、Xの媒介で、ローン条項付で売買契約を締結し、決済日を4日後の同月10日と決定した。
  ↓
Xは、契約以前から、本件物件に通行権の負担があることを知っていたが、Xが買主Yに、その通行権の負担が記載された本件和解調書を示して教えたのは、契約当日だった。
  ↓
驚いたYは、契約の翌日である平成22年9月7日、融資先銀行に対し、本件和解調書を示して、その存在につき説明したところ、本件銀行から、融資条件の変更に当たるから、融資が予定通り平成22年9月10日までに行うことは無理である旨の回答を受けた。
  ↓
Yは、Xに相談し、同月9日、本件売買契約の融資特約条項に基づいて本件売買契約を解除した。
  ↓
Yは、Xに対する不信から、Xに再度交渉を依頼することなく、解除の当日、弁護士に買主との交渉を依頼した。
YはXに対し、本件解除後も本件物件の売買交渉を継続していることをXに対し告げていない。
  ↓
平成22年9月10日、Yと買主は、本件物件所有者である会社Y1を新設分割するという手法で、買主に、「売却」した。
  ↓
Xは、媒介契約に基づき、Y及びY1に対し、媒介手数料等の支払いを求めて提訴した。

[裁判所の判断]

1、以下の2点を考慮し、Xが、売買契約2の成立に寄与した割合は5割と認めた。
第1点 
本件売買契約は、Xの提案により融資特約条項に基づいて解除されたものであり、本件和解調書が、本件売買契約当日までYに呈示されなかったことが主たる原因となったものと認められることからすれば、YがXではなく弁護士に売買契約2の交渉を依頼したことに相応の理由がある
第2点 
あらたな売買契約は、Y代理人による交渉がなければ締結に至らなかったことが推認される

2、ただ、この約款は、不動産取引の媒介に誠実に努力した媒介者の媒介報酬を意図的に排除する目的で、売買契約の当事者間で直接に取引することを防止する目的で規定されている。本件の買主に、そのような意図はない。
これについて裁判所は、次のように判断している。
「本件相当額報酬請求権を認める期間を媒介契約の有効期間の満了後2年以内と長期に定めていることからすれば、上記媒介者を意図的に排除する目的の有無にかかわらず、媒介者の行った労力に対し、その効果が残存していると認められる相当な期間について、媒介者の寄与に応じて仲介手数料の支払義務を認める趣旨があるものと解する」



なお、本件では、ローン条項がある売買契約で、ローンが通らなかったため、契約が解除されたときは、やはり仲介手数料は請求できるだろうか?という点も争われたようである。

驚くべきことに、「できる」というのが、業界の主流であり、これに同意見を述べる御用学者もいる。仲介手数料は、契約を「成立」させたことに対する報酬であり、いったん成立した以上は、その後、解除されても、「成立」したことにはかわりはない、というのが、その理由だ。

しかし、判例の主流は、「媒介契約が、代金についての融資の不成立を解除条件として締結された後、融資の不成立が確定し、これを理由として契約が解除された時には、媒介業者に対して、仲介手数料の支払義務がない」と解している。

まあ、ローン条項で契約が解除されても、なお、仲介手数料を堂々と請求するような非常識な業者は少ないだろうが、この業界では、世間の常識とは異なる非常識が常識として通用している。中には、そういう非常識を平気で行う業者もいると聞いたことがある。仲介業者に依頼するときは、契約が解除されたら仲介手数料を支払う必要があるのか、一応、確認したほうがよい。
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