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ニャラリーガルはなちゃんのひねもすのたり日記

森法律事務所のトップに君臨するニャラリーガルハナちゃんとハナちゃんに従える下僕所長、それぞれの、ひねもすのたりのたりの日々を送ります。このブログで、社会に何かを発信しているわけではありません。

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建物賃貸借契約締結に際して、賃借人から賃貸人へ、賃料以外の金銭が授受される場合がある。その名称はさまざまであり、敷金・権利金・礼金・保証金等である。

それでは、これらがどう違うのか、となると、今一つはっきしりしない。
[敷金]
敷金と言うのは、賃料滞納などの契約不履行による損害賠償を担保するために交付される金銭で、賃貸借契約とは別個の敷金契約を締結するが、通常は、一つの契約書にまとめて記載してある。
なお、賃貸借契約の賃貸人が変更した場合、敷金は、新賃貸人に引き継がれるが、賃借人が変更した場合、敷金は、新賃借人が当然に取得できるものではなく、新賃借人は、改めて敷金を差し入れる必要がある。
[権利金・礼金]
敷金の性質が明確なのに対し、権利金の性質は、やたらと複雑である。
世間で権利金という時は、
1、 賃借人がほかの者より優先的にその場所を賃借できるという場所的利益の対価すなわち貸してもらうことへの謝礼。いわゆるショバ代。
2、 賃料の前払い。
3、 営業権譲渡の対価(世間でいう「のれん代」)
4、 建物賃借権譲渡性承認の対価
5、 造作買取代金。
の5つに分類できる。
居住用の賃貸借は1、2特に1であろう。
営業用の賃貸借は、3~5の場合もある。
どういう性質かは、第一次的には当事者の合意であり、第二次的には慣習で決まるが、多くは、「貸してもらえることへの謝礼」という要素が強いだろう。
[保証金]
保証金の性質は、二つある。
1、 賃貸借契約に定められた賃借人の義務を履行するための担保。
2、 建物などの建設資金にあてる目的をもった金融的性格。(協力金、建設協力金、借入金などともいう)
1は、主に事業用、店舗用の賃貸借で差し入れるものである。
2は、スーパーなどが新規店舗を開店する際に用いる方法で、地主に保証金名目で建設費を融資して建物を建築させ、建築させた建物で店舗を新規開店するのである。
敷金が無利息なのに対し、保証金には、例外的だが、利息を付ける場合もある。
返還義務の範囲については全額返還するもの、一部を償却という名目で返金不要とするもの、全額免除するもの、いろいろである。
返還時期については、一定期間内に一括で返還するもの、分割払いとするものがある。

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定期借家権という制度ができて久しい。
普通、大家は、いったん家を貸すと「正当理由」がない限り、立ち退きを請求できない。ところが、「正当理由」というのは、従来の裁判例では、「大家がどうしても自分で使う必要があり、他に代替手段がない」という、およそ現実にはありえないような厳しい要件を課していた。その結果、家を持っている人は、気安く家を貸したら、もう半永久的にもどってこなくなる可能性があり、賃貸業者以外は、だれも空き家を人に貸すことはしなくなった。結果的に賃貸市場に、(当時は)十分な賃貸家屋の供給ができなくなった。
そこで、大家も安心して家を貸すことができるように、新しく定期借家制度を設けた。この定期借家制度を利用すれば、大家は、所定期日に確実に家を取り戻すことができる。市場に、十分な賃貸家屋の供給が期待できるし、空き家の有効利用もできる。
これが、定期借家制度の立法の趣旨である。

この定期借家制度は、借家人の立場を不安定にするものだから、成立要件が厳格である。
1、契約は公正証書による等書面による(38条1項)。
2、家主は、あらかじめ、借主に対し、当該賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない(同条2項)。

この要件を満たさないなと,契約の更新がないこととする旨の定めは無効となってしまう(同条3項)。

それでは、この「更新できませんよ」という書面は、賃貸借契約書とは別の書類として交付しなければならないのか、それとも、ともかく定期借家権で更新されないんだということがわかっていればよいのか。

後者だとすると、借家人が、定期借家権であること認識していても、たまたま賃貸借契約とは別の書面で交付しなかったことを奇禍として、居座りを認めるようになる。
そこで、第2審の東京高裁は「借主は定期建物賃貸借たることも分かっていた。更に別個の書面が交付される必要性は極めて小さく、それが交付されていなかったとしても、定期建物賃貸借が無効にはならない」として、貸主の立退き請求を認めた。

ところが、最高裁は、借主が定期借家権であることを認識していても、大家さんは、借主に、契約書とは別個独立の書面を交付し、定期建物賃貸借である旨を事前に説明すべきである、として、大家さんの立退き請求を認めなかった。

この判決は、事案解決の妥当性としては、個人的には、釈然としないものがある。
ただ、定期借家権の成立要件は形式的に判断すべきだとする最高裁の考えも一理ある。実質的に判断していたら、定期借家権の成立要件が曖昧になる結果、、定期借家権と普通の借家権との境界線が不明確になり、ひいては不動産賃貸借市場の混乱をもたらするおそれがあるからである。

なお、定期借家権をめぐるトラブルを防ぐため、他の賃貸借契約書同様、定期賃貸借住宅標準契約書が用意されている。通常の仲介業者は、この標準契約書を使うはずで、これを使用しているかぎり、最高裁のようなトラブルは起きないはずである。
なぜ、本件では、この標準契約書を使用しなかったのだろうか?

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東京等南関東とか京都・滋賀では、賃貸借契約の更新をする際に、家賃の1~2か月分を家主に支払うという習慣がある。全国的には、珍しい制度で、戦後の住宅難の際に自然とできた風習らしい。

この更新料について、一時、更新料の無効判決が、あちこちの裁判所で出されたことがある。無効ということは、大家さんは、せっかくもらった更新料を過去にさかのぼって返還することになる。だでさえ経営の苦しい大家さんが、過去にさかのぼって更新料を賃借人に返すことになったら、これはもう完全にアウトである。
しかも、その時期、「過払い金」にかわるマーケットを探していた債務整理専門の弁護士連中が、「過払いの次は更新料の返還だ」と、この更新料返還市場に目を向け始めていた。
自分も弁護士で、人のことは言える立場ではないが、大家として見てみると、こういう弁護士連中が、当時は、「品とか倫理とは無縁の禿鷹」みたいに見えたものだ。

そもそも、更新料の特約は無効だとか、という判例は、およそ、現実の賃貸市場とはかけ離れた前提で論じている。
まず、前提となっているのが、「強者の大家vs弱者の賃借人」という図式であるが、これ自体が、現実離れしている。更新料という習慣ができた背景には、確かに、当時供給不足だった住宅市場で「更新してほしかったら、金を払え」と迫った背景があることは確かだ。しかし、今は、賃貸住宅市場があふれ、完全に供給過剰になっている。大家が強い立場を利用して、更新料を供給することなど、ありえない。
借りる方も、当然、借りるに際しては、更新料の金額を考慮して入居先を決定している。更新料を支払わされたために、賃借人が不当な損害を受けるなどありえない話である。

その意味で、最高裁が平成23年7月15日に、更新料は有効とする判断をしたのは、当然と言えば当然である。
その最高裁の判断とは、以下の通りである。
1、 更新料は、賃料の前払い、補充、賃貸借契約を継続するための対価等の複合的な性質を有する。(更新料を無効とする裁判例は、賃料の前払い、補完、継続する対価等のいずれの性質もなく合理性がないと判断していた)。
2、 賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料が高額にすぎるなどの特段の事情がない限り、消費者法に違反しない。
3、 更新料が高額に過ぎるか否かは、更新料の額と賃料の額、更新される賃貸借期間を総合的に判断する。
4、 更新期間1年、更新料は新賃貸借分の2か月分は、消費者契約法に違反しない。



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前回のブログで、「自然損耗を賃借人に負担させるには、単に特約があればよいのではなく、相当詳細な特約が必要だが、おそらく、どれほど詳しい特約を交わしても、裁判所は不十分と言い続けるだろう」と言う趣旨を述べた。

これに対し、国土交通省は、どのように述べているのだろう。
国土交通省は、2011年8月、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の再改訂版(以下「ガイドライン」という)で、この問題について、次のような趣旨を述べている。

まずガイドラインは、損耗には、次の3種類があるとしている。
1、 経年変化
建物・設備等の自然的な劣化・損耗等。
2、 通常損耗
賃借人の通常の使用により生ずる損耗等
3、 1.2以外の損耗
賃借人の故意過失、善管注意義務違反等による、通常の損耗を超える損耗

ガイドラインでは、「1.2は賃貸人の負担であり、3は賃借人の負担である」としたうえで、契約自由の原則から、1.2も、特約により賃借人に負担させることは可能だとしている。ただし、
ただし、ガイドラインも、無条件で認めるのではなく、以下の通りかなり厳しい要件を課している。
1、 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなど客観的・合理的な理由がある。
(例えば、近隣相場に比べて明らかに家賃が安価なかわりに通常損耗まで負担してもらう場合)
2、 賃借人が、通常賃貸人が負担すべき自然損耗であるにも関わらず、特約で負担させられることを認識している。
(特約を明確に契約書面でさだめ、賃借人が十分な認識と了解をもって契約している)

3、それでは、ガイドラインに触れないようにするにはどうしたらよいかというと、これも、最高裁判例同様、ほぼ不可能に近い。そもそも、今の市況からして、「うちの貸家を借りるときは、本来、支払う必要のないものまで支払ってもらいます」などと説明したら、入居を希望する人など皆無だろう。



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建設省のガイドラインでも、判例でも、「建物の自然損耗は大家さんの負担としなさい」となっているが、それでは、賃貸借特約で建物の自然損耗も賃借人の負担とするとしたら、それは有効だろうか?

民法の賃貸借に関する規定は、任意規定と言って、当事者が反対の特約をすれば有効だということになっている。だから、賃貸借特約で建物の自然損耗も賃借人の負担とするとしても、無効とする理由はない。
しかし、裁判所は、賃貸借契約締結にあたり賃貸人と賃借人の力関係に歴然たる差があることを考慮して、いろいろな理屈をつけて、建物の自然損耗を賃借人にさせないことにしている。

最高裁平成17年12月16日判決は、次のようにのべ、事実上、建物の自然損耗を賃借人の負担とする特約を骨抜きにしている。

(1) 賃借人は,賃貸借契約が終了した場合には,賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ,賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使 用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ, 建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収 は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると,建物の賃借人にその賃貸借におい て生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少な くとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場 合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約(以下「通常損耗補修特 約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。

(2) これを本件についてみると,本件契約における原状回復に関する約定を定めているのは本件契約書22条2項であるが,その内容は上記1(5)に記載 のとおりであるというのであり,同項自体において通常損耗補修特約の内容が具体的に明記されているということはできない。また,同項において引用されてい る本件負担区分表についても,その内容は上記1(6)に記載のとおりであるというのであり,要補修状況を記載した「基準になる状況」欄の文言自体からは, 通常損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえない。したがって,本件契約書には,通常損耗補修特約の成立が認められるために必要なその内容 を具体的に明記した条項はないといわざるを得ない。被上告人は,本件契約を締結する前に,本件共同住宅の入居説明会を行っているが,その際の原状回復に関 する説明内容は上記1(3)に記載のとおりであったというのであるから,上記説明会においても,通常損耗補修特約の内容を明らかにする説明はなかったとい わざるを得ない。そうすると,上告人は,本件契約を締結するに当たり,通常損耗補修特約を認識し,これを合意の内容としたものということはできないから, 本件契約において通常損耗補修特約の合意が成立しているということはできないというべきである。

この最高裁判例をみて、それなら、自然損耗の原状回復義務は賃借人の負担とするという特約を結べばいいんじゃないか、と思ったら、それは甘いと言わざるを得ない。最高裁の、このケースでは、相当詳細な特約条項が結ばれているからだ。
これでも不十分だとしたら、どんな特約にすればいいんだ、というか、「最高裁がOKという特約」なんか、およそ不可能なんじゃないかと考えざるを得ない。明らかに最高裁は、合意の要件を厳しくすることで、事実上、通常損耗補修特約の合意の効力を否定しているのだ。


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