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ニャラリーガルはなちゃんのひねもすのたり日記

森法律事務所のトップに君臨するニャラリーガルハナちゃんとハナちゃんに従える下僕所長、それぞれの、ひねもすのたりのたりの日々を送ります。このブログで、社会に何かを発信しているわけではありません。

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東京では、土地が高価だから、土地付き一戸建てというと、たいていミニ開発・ミニ分譲です。
例えば200坪くらいの土地を8つに分け、25坪くらいにして販売する。これだと建売も手ごろな価格となり、売りやすくなります。
しかし、その土地の一面しか公道に面していないときは,200坪の土地の真ん中に私道を設け、区各地購入者は、その私道をとおって公道に通ずるという方法をとります。
こういう場合、その真ん中の私道は、各区画所有者が共有するという形をとります。もちろん、認定私道になれば文句はないけど、認定私道がとれないときでも、各区画所有者は、その共有地を私道として通行するという合意―私道使用契約を取り交わします。が、仮に、私道使用契約という合意書面がなくても、私道として利用するという暗黙の了解がある場合が、ほとんどでしょう。

それでは、この場合、区画所有者の一人が、第三者にその土地を譲渡した場合は、どうなるでしょう?

私道として共有地を使うという約束は、単なる「その当人同士の約束」ですから、土地を購入した第三者を拘束できないとも考えられます。特に同じ区画でも、公道に面した土地を購入した人なんか、「俺には、この共有地を通る必要なんかない。公道に面していない連中は、通ってもよいけど、俺の共有部分について通行料を支払え」なんて堂々と要求したりします。
まさか、そんな人いるのかと思う方もおられるかもしれませんが、自分は、こういう事件を何件か扱ったことがあります。世の中には、変わった方もおられるんですね。おまけに、その時、担当裁判官が、「ただで通るんだから、金を払うのは当然じゃないのか」という間抜けな事を言い出して、あわてた記憶があります。

結論から言うと、こんな言い分は通りません。
というのは、民法254条は、「共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。」と規定しているからです。
この規定は、普通は、他の共有者が立て替えたとか固定資産税を指すとされていますが、私道契約という約束も含まれます。

もっとも、最近は、私道部分を共有にせず、細かく細分化し、互いに、相手の私道に通ずる土地を持ちあうという形態も行われています。この場合でも、私道使用契約は、当事者を拘束すると解釈されています。

事案は、ちょっと違いますが、東京地裁平成25年3月26日判決は、この問題を扱ったものです。
私道に接する宅地があり、その私道は、道路として利用するという私道使用契約がある。その私道に面した宅地の一つが売買された。買主が私道を利用しようとすると、従前からそこにいる所有者が、新しい所有者が私道として利用するのを何かと妨害する。
そこで買主が、従前からいる宅地所有者に私道使用権の確認と妨害排除の裁判を起こした。
そういう事案で、裁判所は、この私道使用契約が、新たな購入者にも及ぶことを認め、私道使用権の確認と妨害排除の請求を認めました。
もっとも、この事案では、私道契約という文書があり、被告は、この私道使用契約は、一時的な約束だという争い方をしたようですが、裁判所は、「文書には、そのような限定はない」と被告の主張を退けました。

判例の事案では、私道使用契約という文書があったのですが、実際は、こういう文書があることは少なく、所有者間の暗黙の了解として処理されています。
多くの場合は、不都合はありませんが、本件のようにトラブルになると、その内容や範囲を巡って食い違いがみられます。

こういうトラブルがなくても、いざ売ろうとすると購入者から「銀行がローンの条件として通行承諾書の要求をしています」と言われて、売るのが難しくなったという例は、それなりにあります。

開発業者は、こういうトラブルを避けるために、ミニ開発をするときは、きちんと合意書を作成し、できれば、公正証書なんかにしておくのが望ましいですね。ただ、そういう開発業者は少なく、またトラブルが発生したときは、その開発業者がつぶれてしまっているなんてこともあります。


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不動産業者は、不動産売買のプロとして、売買を適正に行う義務がある。その義務の一環として、契約当事者に書面を交付する義務があるとされている。

第1が、宅建業法35条に規定があることから、「35条書面」といわれるものであるが、一般的には、いわゆる「重要事項説明書」といわれる書面である。

第2が、宅建業法37条に規定があることから、「37条書面」と言われるもので、これは、物件の引渡時期や移転登記申請時期 (売買・交換のみ)、代金・交換差金の額、支払時期、支払方法などを明記した書面である。
ただし、実務上は、売買契約書とは別に37条書面を交付しているという例はレアケースである。というのも、国土交通省の見解により「第37条に掲げる事項が記載された契約書であれば、当該契約書をもってこの書面とすることができる」とされているからである。
宅地建物取引業者が関与する売買契約では、ほぼ例外なく契約書が作成され、これが「第37条書面」の代わりとして扱われている。宅地建物取引業法の第37条は「書面の交付義務」というよりも「契約書の必須記載事項」を定めたものとして考えたほうが分かりやすい。

このうち「35条書面(重要事項説明書)」は、宅建業者が、①取引の相手方等に売買等の意思決定をする上での重要な判断材料を提供し、②それにより相手方等が取引内容を十分に理解した上で契約を締結できるようにし、③契約締結後における紛争を未然に防ぐのが目的である。
重要事項説明書は、買主等の契約締結意思に影響を与える事項についてその判断材料を事前に提供するという性質を持つため、その説明は目的物を取得し、又は借りようとしている買主又は貸主に行えば足りる。
ただし、契約の前に行わなければならない。また、買主が業者の場合は、義務付けられていない。

一方、「37条書面」は、宅地建物の取引に関する契約が成立した後、①その契約内容に関し当事者間に紛争が生ずることを防ぐため、②成立した契約の内容を書面に記載することにより、③その明確化と買主等への注意喚起を図ることにある。
したがって、交付の相手方は、契約当事者全員である。
また、紛争防止が目的だから、契約成立後遅滞なく交付すればよく、事前に交付する必要はない。ただ、常識的には、契約書に署名押印して契約成立というケースがほとんどだろうから、成立後遅滞なく交付する、なんてことはあり得ない。
仮に、事前に契約書を作成しないまま契約させ、そのあと、すぐに交付してトラブルが起きても、37条違反の問題は起きなくても、業者の債務不履行責任は免れまい。


35条書面と37条書面の規定の趣旨は、要するに、きちんと大切な事項を定めた売買契約書を作成して交付しなさい(37条)、その際は、事前に必ず売買に当たって重要な事項を説明しなさい(35条)、というもので、不動産取引では日常的に行われていて、あまりにも当たり前すぎで、法令に基づく行為だとは意識しないで行われていることもあろう。

しかし、実務上、これが問題になった判例がある。
東京地判 平23・6・3判決である。
事案の概要は、以下の通り。
1、Cは、仲介業者Bの仲介で、Aから、代金35億円で不動産を購入することにした。
2、Cは、ほぼ同時に、これまたBの仲介で、Dに60億円で売却することにした。
3、Cは、自己資金が全くなく、借入か、あるいは転売を同時並行的に進めることで、手付金や売買代金を工面しようとしたようである。
4、しかし、いまだに買い受けていないCに融資する金融機関などはないし、Dとて、登記簿上所有者と確認できないのに、手付を支払うなどできない。
5、結局、Cは、売買契約当日、手付を用意できず、Aは、37条書面を兼ねる売買契約書の交付を拒否した。
6、その後、Cは、色々と奔走し、Dと売買契約を締結し、その手付金でAに手付金を支払ったが、残金を用意できず、売買契約は解除された。
7、結局、同じ仲介業者Bの仲介で、所有者Aは、直接Dとの間で売買契約を締結し、Dに売買した。
8、これに怒ったCが、仲介業者であるBを訴えた。その内容は、
(1)37条書面を交付していない。
(2)37条書面の交付を受けていれば、つまり、売買契約書の交付をきちんと受けていれば融資を受けられて、転売することが可能だった。
(3)Bのおかげで転売益25億円を失った。賠償しろ!
というものである。
Bは、「手付けもうたないのに、37条書面である売買契約書を交付しろ、なんてとんでもない」と争った。
まあ、取引の常識としては売買契約書=37条書面だし、同時に、「手付けも払えない分際で売買契約書を交付しろ、なんて虫が良すぎる」と考えた仲介業者Bの気持ちは、わからないでもない。
しかし、本来は、37条書面と売買契約書は別個のものである。いくら「手付をうたないから売買契約書は渡せないのは当り前だろう」といっても、法は、そういう場合でも、37条書面を要求している。
Bは、この場合、売買契約書とは別に37条書面を渡すべきであった。裁判所は、この点をとらえて、Bに債務不履行責任を認めている。

転売益の方は、当然ながら、否定された。37条書面の交付と転売益の喪失との間には、どう考えても因果関係はないからである。Cは、資金を用意できずに転売できなかった、それだけの話である。

不動産業界には、Cのような人間が、それなりにいる。世間一般からは、理解できないタイプだろうが、不動産業界というのは、人間のるつぼなのだ。


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家を買う時、たいてい、ローン条項をつける。「ローンを組んで買う予定だけど、ローンを組めなかったら、この売買契約は解除します」という条項である。
だけど、各金融機関によってローンを組める場合と組めない場合がある。一番厳しいのは都市銀行。逆に言えば、都市銀行がOKというなら、無理のないローンと言えます。逆に、街の高利貸なんか、無理なローンでもOKです。彼らは、融資という名目で、暴力的にお金を収奪するだけですから。
だけど、ローン条項を組むときは、あまりどこの金融機関か特定することはない。というのは、たいてい、買主は、契約締結段階で、すでに特定の金融機関とローン交渉を開始しており、その金融機関がローンを断ったら、ローン条項で契約をなしにするというのが普通の流れだからである。

顧客がローン条項を付けて不動産購入契約を締結していたところ、予定していた都市銀行に断られた。ところが、業者は、金利の高いノンバンクを紹介し、ここなら融資を受けられると勧めたが、顧客は、ノンバンクなんかとんでもない、としてローンを組むのを拒否し、ローン条項に基づき契約を解除し、手付の返還を求めた。
こういう事案で、東京地裁 平成16年7月30日判決は、契約の解除を認めています。

このローン条項では、「融資申込先  都市銀行他」となっており、「他」とあることから、ノンバンクでなんでいけないんだと売り主や仲介業者がローン条項の解除を拒否したケースです。
判決は、
「都市銀行からの融資は無理であり、これ以外に、原告が、本件売買契約の締結に当たり、都市銀行に比べ金利の高いノンバンクから融資を受けるほかないことを了承していたと認めるに足りる証拠はない。また、「都市銀行他」という文言は、都市銀行及びそれに類する金融機関を意味するものと解するのが自然であることを併せ考慮すると、ノンバンクは、本件売買契約ローン条項の「都市銀行他」に含まれないと認めるのが相当である。

まあ、不動産取引の常識からして当然の判決でしょう。それにしても、この売り主さん、裁判なんかで争うよりも、手付をさっさと返して次の買い手を見つけるほうが合理的だと思うのですが、なんで裁判で争っても、原告に無理やり購入させようとしたんでしょうか。しかも、契約書に記載されたローン条項が、妙に詳細で、あまりお目にかかったことのないローン条項になっています。



 

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不動産仲介業者の主たる業務は、世間的には、「お客を見つける」ことと思われています。買主を探す、いい物件を紹介してもらう、そのついでに契約書も作成してもらう。これが、顧客のニーズです。
しかし、仲介業者の主たる業務は、買い手・売り手を見つけることではなく、売買契約について両当事者の仲にたち、後日、トラブルが発生しないよう防止することです。

不動産業者は、売買契約の媒介においては、売買対象物における重要事項につき調査し、委任者に告知すべき義務があります。そこで、不動産業者が仲介をする場合には、媒介業者として、土地や建物を購入しようとする買い主に対し、重要な事項を書面に記載し、これに基づき説明することになっています(宅建業法35条)。

問題は、何が重要事項なのか、ということです。これが不明確です。
というのは、「何が重要か」は人によってさまざまで、不動産業者は、買主の意向をくみ取って、重要と思われる事項を説明しなければなりません。結局のところ、「そのような事情があるのであれば、当該物件は購入しなかった(借りなかった)」といえるだけ買い主(借主)にとって当該契約締結にあったって重要視される事項」を重要事項というものといえます。
所有権の有無や制限物権、宅地造成等規制法、都市計画法、建築基準法上の接道義務、指導要綱に規定された行政指導、文化財保護法57条の2の文化財包蔵地法令上の規制等は、もちろん、隣地との境界紛争、管理費や固定資産税滞納も重要な事項です。さらには騒音、周辺環境特に今後高層建物が建つか否か、日照、通風、眺望、周辺施設、不動産取引に対する課税、軟弱地盤、地中埋設物、土壌汚染等々。それ以外にも、色々とあります。

判例を見ると以下が「重要事項」とされています。
(1) おなじ賃貸マンションに、賃借人に暴力団組員がいるのか否か(東京地判H9.10.20)
(2) 耐火性が建築基準法上求められているマンションの一部が木造部分の建築基準法上の違法建築である(横浜地裁H9.5.26)
(3) 土地売買にあたって、根抵当権設定登記が付せられている(東京地判H8.7.12)
(4) 建物賃貸借において、差押登記が付せられていること(東京地判H4.4.16)
(5) 土地売買において、行政指導による建築制限の存在(東京高判H2.1.25・大阪高判S58.7.19)
(6)自殺者が出ていた、犯行現場であるか否か


[眺望]
重要事項でしばしば問題になるのが「眺望」です。実務上、眺望が重要事項か否かでトラブルになり、多くの場合、眺望も説明すべきだとして、賠償責任を認めています。ただ契約解除を認めた判例は少数です。
ところが、福岡地裁H18・2・2は、眺望について重要な説明義務違反があったとして、売買契約の解除を認めています。業者は、全室オーシャンビューとして物件を販売しましたが、完成してみると、海は見えるものの、前方数メートルに電信柱がたち、さらに送電線が3本走っていることから、「これじゃ、楽しみにしていた眺望がだいなしだ」として、売買契約の解除を求めたものです。
裁判所は、購入者が眺望を重視していたことを認め、売買契約の解除をみとめました。

[降雨による浸水の恐れ]
判例ではありませんが、多くの市町村で、「行政指導」がなされています。
「不動産業者は、地形などの地域の状況から明らかに浸水のおそれがないときを除いては、取引対象となる土地(建物)が、降雨によって浸水するおそれがあることについて、取引に際して調査する義務がある。
土地の浸水又は冠水が数年に一回しかないときでも、『浸水又は冠水が2、3年に1回あった』旨の説明をするよう努める義務がある。」

[保安林指定]
ちょっとかわった判例で、保安林の指定についての調査義務を認めた最高裁判例があります。
「山林の売買を仲介する場合には、買主に対して交付すべき物件説明書に都市計画法、森林法などの法令に基づく制限の記載欄があり、かつ、目的たる山林が山間地に所在していて森林法による保安林の指定が推測される場合には、登記簿上の地目が保安林でなく、また現地に保安林指定の標識がないときであつても、宅地建物取引業者には、所轄機関に照会して右山林について保安林の指定があるかどうかを調査すべき注意義務がある(最判S55.6.5)」

買主としては、仲介業者から渡される「物件希望表」等の書面に、自分の希望をきちんと書いておくべきです。また、業者としては、事前にきちんと買主から希望をリサーチしておくべきです。
これさえ、きちんと行われていれば、トラブルにはならないでしょう。



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仲介業者が不動産を1億円で買う買主を見つけてくれたので、売買契約を締結することになった。しかし、いざ、売買契約を締結する段になり、アナタは、仲介業者の仲介手数料を支払うのが惜しくなる。アナタは、売り主に電話をして、そっとささやく。
「買主さん、客見つけただけで、双方からあわせて6%+12万円なんて、べらぼうじゃないですか?1億円だから、買主見つけただけで612万円。私の年収と同じです。この契約キャンセルして、あとで二人だけでそっと契約しませんか」
買主は、「それもそうだ」といって、売り主とタッグを組んで、仲介業者抜きにして売買契約を締結した。
この場合、仲介業者は、仲介手数料を請求できるだろうか?
仲介手数料は契約を「成立」させたこと対する対価だから、「成立」がない以上、報酬は請求できそうもないが、世の中、そう甘くはない。結論からいうと、仲介報酬は請求できる。
というのは、一般媒介契約約款書には、「一般媒介契約の有効期間内又は有効期間の満了後2年以内に、依頼主が、仲介業者の紹介によって知った相手方と仲介業者を排除して目的物件の売買又は交換の契約を締結した時は、仲介業者は、依頼主に対して、契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求できる」との記載が、普通は、あるからである。業界では、このような行為を「抜き」行為というそうで、ちゃんと、契約書に対策はうってあるのである。

ただ、約款には、請求できるのは、「契約の成立に寄与した割合」に限られる。前述した例では、100%寄与があるといえるが、100%と言えないケースとは、どういう場合だろう?

これを扱った判例がある。東京地判 平24・11・16がそれである。

[事案の概要]
事案の概要は、以下の通り。

媒介業者Xは、買主Yとの間で、平成22年9月6日、一般媒介契約書に基づき、本件媒介契約(契約締結後3ケ月H22.12.5まで)を締結した。
  ↓
売主と買主Yは、Xの媒介で、ローン条項付で売買契約を締結し、決済日を4日後の同月10日と決定した。
  ↓
Xは、契約以前から、本件物件に通行権の負担があることを知っていたが、Xが買主Yに、その通行権の負担が記載された本件和解調書を示して教えたのは、契約当日だった。
  ↓
驚いたYは、契約の翌日である平成22年9月7日、融資先銀行に対し、本件和解調書を示して、その存在につき説明したところ、本件銀行から、融資条件の変更に当たるから、融資が予定通り平成22年9月10日までに行うことは無理である旨の回答を受けた。
  ↓
Yは、Xに相談し、同月9日、本件売買契約の融資特約条項に基づいて本件売買契約を解除した。
  ↓
Yは、Xに対する不信から、Xに再度交渉を依頼することなく、解除の当日、弁護士に買主との交渉を依頼した。
YはXに対し、本件解除後も本件物件の売買交渉を継続していることをXに対し告げていない。
  ↓
平成22年9月10日、Yと買主は、本件物件所有者である会社Y1を新設分割するという手法で、買主に、「売却」した。
  ↓
Xは、媒介契約に基づき、Y及びY1に対し、媒介手数料等の支払いを求めて提訴した。

[裁判所の判断]

1、以下の2点を考慮し、Xが、売買契約2の成立に寄与した割合は5割と認めた。
第1点 
本件売買契約は、Xの提案により融資特約条項に基づいて解除されたものであり、本件和解調書が、本件売買契約当日までYに呈示されなかったことが主たる原因となったものと認められることからすれば、YがXではなく弁護士に売買契約2の交渉を依頼したことに相応の理由がある
第2点 
あらたな売買契約は、Y代理人による交渉がなければ締結に至らなかったことが推認される

2、ただ、この約款は、不動産取引の媒介に誠実に努力した媒介者の媒介報酬を意図的に排除する目的で、売買契約の当事者間で直接に取引することを防止する目的で規定されている。本件の買主に、そのような意図はない。
これについて裁判所は、次のように判断している。
「本件相当額報酬請求権を認める期間を媒介契約の有効期間の満了後2年以内と長期に定めていることからすれば、上記媒介者を意図的に排除する目的の有無にかかわらず、媒介者の行った労力に対し、その効果が残存していると認められる相当な期間について、媒介者の寄与に応じて仲介手数料の支払義務を認める趣旨があるものと解する」



なお、本件では、ローン条項がある売買契約で、ローンが通らなかったため、契約が解除されたときは、やはり仲介手数料は請求できるだろうか?という点も争われたようである。

驚くべきことに、「できる」というのが、業界の主流であり、これに同意見を述べる御用学者もいる。仲介手数料は、契約を「成立」させたことに対する報酬であり、いったん成立した以上は、その後、解除されても、「成立」したことにはかわりはない、というのが、その理由だ。

しかし、判例の主流は、「媒介契約が、代金についての融資の不成立を解除条件として締結された後、融資の不成立が確定し、これを理由として契約が解除された時には、媒介業者に対して、仲介手数料の支払義務がない」と解している。

まあ、ローン条項で契約が解除されても、なお、仲介手数料を堂々と請求するような非常識な業者は少ないだろうが、この業界では、世間の常識とは異なる非常識が常識として通用している。中には、そういう非常識を平気で行う業者もいると聞いたことがある。仲介業者に依頼するときは、契約が解除されたら仲介手数料を支払う必要があるのか、一応、確認したほうがよい。
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