ニャラリーガルはなちゃんのひねもすのたり日記
森法律事務所のトップに君臨するニャラリーガルハナちゃんとハナちゃんに従える下僕所長、それぞれの、ひねもすのたりのたりの日々を送ります。このブログで、社会に何かを発信しているわけではありません。
家賃滞納・建物明渡・欠陥住宅の相談は、不動産案件取扱件数トップレベルの森法律事務所へ
http://www.mori-law-office.com/fudousan/index.html
03-3553-5916
購入した建物で実は自殺者がいたとか、殺人事件があったとなると、心理的瑕疵があったとして、売買にあたり、重要事項として買主に事前に説明しなければなりません。もしこれを説明しなかったら、心理的瑕疵があったとして、売買代金の減額が認められます。
それじゃあ、建物が完成する前に、工事現場で働く人が、その工事現場で自殺したら、「欠陥」住宅になるのか?
自分は、欠陥住宅問題を専門的に扱う住宅紛争審査会審査委員をやっていて、研修なんかで、色々な「瑕疵」の勉強をしているけど、この手の心理的瑕疵の欠陥住宅問題は聞いたことがありません。
しかし、これを扱った判例があります。東京地裁 平24・11・6 判決です。
建設会社の人達は、誰でも経験があるだろうけど、建築中、異様なまでにクレームをつける近所の人がときどきいます。まあ、隣で建設工事が始まれば、誰でも迷惑をうけます。しかし、そこはお互い様。多少は文句を言っても、工事現場の現場長あたりが平身低頭で謝罪に行けば、まあまあ、で終わります。これ以上、トラブルにはならない。
ところが、モンスターみたいな人が近所にいると、もう大変。あれが気に食わない、これが我慢できない、ともかく、連日、工事現場の事務所におしかけ、文句を言う。現場長は、精神的に追い詰められる。会社に対策を求めたかどうかわからないけど、会社と注文主、クレーマーの板挟みになった工事担当者は、自殺という方法を選んだ。そういう案件です。
すると、今度は、注文主が、「とんでもない。こんな建物、住むわけにはいかんよ」といって、請負会社に賠償を求めて裁判を起こしたわけです。
裁判所の見解は、以下の通りです。
1、建物の請負契約においては、注文者と請負人との間では、請負人の行為により、完成した建物において注文者が住み心地の良さを欠くと感ずるような心理的に嫌悪すべき事由を発生させないことが、たとえ明示されていなくても契約の内容とされている。
2、被告が、本件事故により生じた心理的嫌悪感により、本件建物に居住することに強い抵抗を感じているとしても無理はないものと認められる。
また、本件事故の態様からして、本件事故により、通常一般人も本件建物における住み心地の良さを欠くと感ずることには合理的理由がある。
3、本件事故は、被告が本件建物の住み心地の良さを欠くと感ずるような心理的に嫌悪すべき事由といえる。
4、その結果、本件建物には30%程度の減価が生じた
5、本件土地上から本件建物が滅失するに至った場合を考えると自殺である本件事故が発生した本件建物の敷地である本件土地について、本件建物の有無にかかわらず、本件事故を理由とする減価が生じるとまでいうことはできない。
こうなると、単に欠陥住宅問題だけでなく、別の方面にも問題は波及します。まず建築会社は、現場担当者が自殺したことについて安全配慮義務を問われます。会社に悩みを訴えていたものの、適切な対応をとっていなかったら、会社は、安全配慮義務違反を問われ、賠償責任は免れません。
お隣のクレームをつけた人も、そのクレームの程度が非常識なレベルなら、不法行為賠償責任を負わされることになります。
隣で工事が始まり、クレームをつけたくなるのは、人間として当然ですが、その程度がモンスターと言われるレベルになってないか、検討する必要はありますね。もっとも、そんな検討ができるような人なら、モンスターにはならないでしょうが。
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図解で早わかり 借地借家 法
森公任 監修
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=3945
三修社 定価: 1,890円(本体:1,800円+税)
「賃貸借契約を締結すると、貸主と借主は長期間にわたってつき合うことになります。
長期の契約の間に貸主と借主との間でトラブルが生じてしまう可能性は決して低くありません。
本書は、借りる側、貸す側のどちらの立場からも必要となる借地借家法の基本事項を中心に解説しています。
賃貸借契約においてしばしばトラブルになりやすい、敷金・賃料・必要費・有益費といった金銭がらみの問題は、図表を使いながらわかりやすく説明しました。
「図解で早わかり 倒産法のしくみ」
森公任 森元みのり 共同監修
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=4054
定価: 1,890円(本体:1,800円+税)
「法的整理から私的整理まで、様々な倒産制度のしくみや実務上のポイントがわかる。
また、解散・清算、M&Aの知識まで倒産関連の知識を集約。
さらに、法人破産以外の個人民事再生や個人破産についてもフォローした一冊! 」
「最新 図解で早わかり
改正対応! 相続・贈与の法律と税金」
森公任 ・ 森元みのり 監修
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=3992
三修社 定価: 1,890円(本体:1,800円+税)
「本書では、相続分や遺産分割、遺言など相続のしくみについて詳細に解説するとともに、相続税や贈与税のしくみ、教育資金の一括贈与に伴う贈与税の改正など平成25年度の税制改正についてわかりやすく解説しています。
さらに遺言書や相続手続きにそのまま利用できる書式なども掲載し、相続手続きをスムーズに進めることができるよう工夫しました。」
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03-3553-5916
購入した建物で実は自殺者がいたとか、殺人事件があったとなると、心理的瑕疵があったとして、売買にあたり、重要事項として買主に事前に説明しなければなりません。もしこれを説明しなかったら、心理的瑕疵があったとして、売買代金の減額が認められます。
それじゃあ、建物が完成する前に、工事現場で働く人が、その工事現場で自殺したら、「欠陥」住宅になるのか?
自分は、欠陥住宅問題を専門的に扱う住宅紛争審査会審査委員をやっていて、研修なんかで、色々な「瑕疵」の勉強をしているけど、この手の心理的瑕疵の欠陥住宅問題は聞いたことがありません。
しかし、これを扱った判例があります。東京地裁 平24・11・6 判決です。
建設会社の人達は、誰でも経験があるだろうけど、建築中、異様なまでにクレームをつける近所の人がときどきいます。まあ、隣で建設工事が始まれば、誰でも迷惑をうけます。しかし、そこはお互い様。多少は文句を言っても、工事現場の現場長あたりが平身低頭で謝罪に行けば、まあまあ、で終わります。これ以上、トラブルにはならない。
ところが、モンスターみたいな人が近所にいると、もう大変。あれが気に食わない、これが我慢できない、ともかく、連日、工事現場の事務所におしかけ、文句を言う。現場長は、精神的に追い詰められる。会社に対策を求めたかどうかわからないけど、会社と注文主、クレーマーの板挟みになった工事担当者は、自殺という方法を選んだ。そういう案件です。
すると、今度は、注文主が、「とんでもない。こんな建物、住むわけにはいかんよ」といって、請負会社に賠償を求めて裁判を起こしたわけです。
裁判所の見解は、以下の通りです。
1、建物の請負契約においては、注文者と請負人との間では、請負人の行為により、完成した建物において注文者が住み心地の良さを欠くと感ずるような心理的に嫌悪すべき事由を発生させないことが、たとえ明示されていなくても契約の内容とされている。
2、被告が、本件事故により生じた心理的嫌悪感により、本件建物に居住することに強い抵抗を感じているとしても無理はないものと認められる。
また、本件事故の態様からして、本件事故により、通常一般人も本件建物における住み心地の良さを欠くと感ずることには合理的理由がある。
3、本件事故は、被告が本件建物の住み心地の良さを欠くと感ずるような心理的に嫌悪すべき事由といえる。
4、その結果、本件建物には30%程度の減価が生じた
5、本件土地上から本件建物が滅失するに至った場合を考えると自殺である本件事故が発生した本件建物の敷地である本件土地について、本件建物の有無にかかわらず、本件事故を理由とする減価が生じるとまでいうことはできない。
こうなると、単に欠陥住宅問題だけでなく、別の方面にも問題は波及します。まず建築会社は、現場担当者が自殺したことについて安全配慮義務を問われます。会社に悩みを訴えていたものの、適切な対応をとっていなかったら、会社は、安全配慮義務違反を問われ、賠償責任は免れません。
お隣のクレームをつけた人も、そのクレームの程度が非常識なレベルなら、不法行為賠償責任を負わされることになります。
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「本書では、相続分や遺産分割、遺言など相続のしくみについて詳細に解説するとともに、相続税や贈与税のしくみ、教育資金の一括贈与に伴う贈与税の改正など平成25年度の税制改正についてわかりやすく解説しています。
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医者が医療業務を、弁護士が法律業務を独占しているように、わが国では、建物の設計とか監理とかは建築士が業務を独占しています。
建築確認をもらうために工事監理者の名前を書かなければならない、その管理者は一級建築士でなければならない、そこで、設計を頼んだ建築士さんに、ちょいと名前だけ書いてもらう。これは、日常的に行われているという現実があります。
大手の建築会社なんかは、社員に一級建築士を多数抱えているので別に問題はないんですが、小さな町の工務店なんかになると、いつも設計を頼んでいる建築士さんに書類上、工事監理者にだけなってもらい、建築確認をもらうわけです。
しかし、その設計士さんは、実際に工事の監理なんかしない。で、建物が建った後に欠陥が明らかになった。こういう場合、工事監理者に名前を貸した建築士さんは、責任を負うのか?
これは、建築業界の常識と世間の常識が完全に相対立するところです。
自分が経験するかぎり、名義を貸したら責任を負わなければならない、などと意識している建築士さんは皆無です。なぜなら、だれもが当たり前のようにやっていることで、実際、施主さんだって、あの建築士さんが監理するから大丈夫だ、なんて考えている人は誰もいないはずだと彼らは考えます。
しかし、これは、世間の常識には反します。名義を貸す以上、相応の責任を負うべきは当然ではないか。これは誰もが考えるでしょう。
裁判所も、基本的には、世間の常識に従って建築士に責任を負わせています。ただ、一方で、安易な名義貸しが横行している事実、建築士がもらう名義料が足もとを見られて、それほど多額でない事実等から、欠陥住宅の全額について責任を負わせることなく、ある程度減額して責任を負わせています。
つまり、単に名義貸しで、それほど名義料ももらっていないにもかかわらず、あまりにも欠陥がひどいときは、損害額の10%。逆に、かなりの名義料をもらっており、建築に関与の度合いも高いときは100%。各事案ごとに、関与の度合い、名義料等を総合的に判断して、割合的に建築士の責任を認めているようです。
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大手の建築会社なんかは、社員に一級建築士を多数抱えているので別に問題はないんですが、小さな町の工務店なんかになると、いつも設計を頼んでいる建築士さんに書類上、工事監理者にだけなってもらい、建築確認をもらうわけです。
しかし、その設計士さんは、実際に工事の監理なんかしない。で、建物が建った後に欠陥が明らかになった。こういう場合、工事監理者に名前を貸した建築士さんは、責任を負うのか?
これは、建築業界の常識と世間の常識が完全に相対立するところです。
自分が経験するかぎり、名義を貸したら責任を負わなければならない、などと意識している建築士さんは皆無です。なぜなら、だれもが当たり前のようにやっていることで、実際、施主さんだって、あの建築士さんが監理するから大丈夫だ、なんて考えている人は誰もいないはずだと彼らは考えます。
しかし、これは、世間の常識には反します。名義を貸す以上、相応の責任を負うべきは当然ではないか。これは誰もが考えるでしょう。
裁判所も、基本的には、世間の常識に従って建築士に責任を負わせています。ただ、一方で、安易な名義貸しが横行している事実、建築士がもらう名義料が足もとを見られて、それほど多額でない事実等から、欠陥住宅の全額について責任を負わせることなく、ある程度減額して責任を負わせています。
つまり、単に名義貸しで、それほど名義料ももらっていないにもかかわらず、あまりにも欠陥がひどいときは、損害額の10%。逆に、かなりの名義料をもらっており、建築に関与の度合いも高いときは100%。各事案ごとに、関与の度合い、名義料等を総合的に判断して、割合的に建築士の責任を認めているようです。
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完成された建物が設計図面と異なるというだけで瑕疵があるといえるか?
世間の常識からすれば、「そりゃ、当然、瑕疵がある」ということになるでしょう。
札幌地裁H17・10・28判決も次のように述べています。
「建物について瑕疵があるか否かを判断するに当たっては、まず、当該建物の設計図書、契約図面及び確認図書が当事者間の契約内容を画するものである」から、特段の事情がない限り、「当該建物が設計図書通りに建築されている場合には瑕疵がないとし、その通りに建築されていない場合には瑕疵があると判断すべきである」
これには誰も異論がないのではないでしょうか?
ところが、こういう判決が一部にあるものの、どうも判例は、「設計と異なったって、それだけでは瑕疵ではない」と考えているふしがあります。
阪神淡路大震災の教訓から、建て主が、鉄骨の柱を30mm×300mmに設計内容を変更しました。ところが、建築会社の方で、250mmでも耐震性に差異はないとして、勝手に250mmに変更して建築してしまいました。そこで、建築主が建築会社を訴えたのです。
建て主の気持ちもわかるような気もしますが、一審も二審も、「耐震性に影響はないから瑕疵ではない」と判断しました。どうも裁判所は、伝統的に、「現実に被害が生じていないのに文句を言うのはクレーマーだ」みたいな考え方をしているようです。
さすがに最高裁は、「そりゃおかしい、契約の重要な内容部分と異なるときは瑕疵だ」ということで、原判決を破棄しました。しかし、破棄差し戻し後の裁判で、最終的に認められたのは、250mmと300mmの鉄骨の材料費の違いだけでした。
まあ、これでも、進歩したほうで、昔の判例なんか、「建築基準法に違反したからといって、現実に損害が生じていない」などと言って建築主の請求を棄却していたんです。今は、建築基準法に違反した建物はアウトですが、それでも、現実の賠償額となると微々たる例が多いのが現実です。
ですから、建築主さんとしては、契約と異なるから即瑕疵だと断言せず、それが契約の重要な内容であることを立証する必要があるし、建築会社としては、契約内容と異なるとしても、それだけで、この裁判は負けだとあきらめる必要はないということになります。
ただ、裁判所の考え方を推し進めると、何のために設計図書を作ったり、何のために契約をするのか、わからなくなってしまいますね。あれほど書面中心主義で、契約の文言を重視する裁判所が、なんで建築になると、別の考え方をするんでしょうか。
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完成された建物が設計図面と異なるというだけで瑕疵があるといえるか?
世間の常識からすれば、「そりゃ、当然、瑕疵がある」ということになるでしょう。
札幌地裁H17・10・28判決も次のように述べています。
「建物について瑕疵があるか否かを判断するに当たっては、まず、当該建物の設計図書、契約図面及び確認図書が当事者間の契約内容を画するものである」から、特段の事情がない限り、「当該建物が設計図書通りに建築されている場合には瑕疵がないとし、その通りに建築されていない場合には瑕疵があると判断すべきである」
これには誰も異論がないのではないでしょうか?
ところが、こういう判決が一部にあるものの、どうも判例は、「設計と異なったって、それだけでは瑕疵ではない」と考えているふしがあります。
阪神淡路大震災の教訓から、建て主が、鉄骨の柱を30mm×300mmに設計内容を変更しました。ところが、建築会社の方で、250mmでも耐震性に差異はないとして、勝手に250mmに変更して建築してしまいました。そこで、建築主が建築会社を訴えたのです。
建て主の気持ちもわかるような気もしますが、一審も二審も、「耐震性に影響はないから瑕疵ではない」と判断しました。どうも裁判所は、伝統的に、「現実に被害が生じていないのに文句を言うのはクレーマーだ」みたいな考え方をしているようです。
さすがに最高裁は、「そりゃおかしい、契約の重要な内容部分と異なるときは瑕疵だ」ということで、原判決を破棄しました。しかし、破棄差し戻し後の裁判で、最終的に認められたのは、250mmと300mmの鉄骨の材料費の違いだけでした。
まあ、これでも、進歩したほうで、昔の判例なんか、「建築基準法に違反したからといって、現実に損害が生じていない」などと言って建築主の請求を棄却していたんです。今は、建築基準法に違反した建物はアウトですが、それでも、現実の賠償額となると微々たる例が多いのが現実です。
ですから、建築主さんとしては、契約と異なるから即瑕疵だと断言せず、それが契約の重要な内容であることを立証する必要があるし、建築会社としては、契約内容と異なるとしても、それだけで、この裁判は負けだとあきらめる必要はないということになります。
ただ、裁判所の考え方を推し進めると、何のために設計図書を作ったり、何のために契約をするのか、わからなくなってしまいますね。あれほど書面中心主義で、契約の文言を重視する裁判所が、なんで建築になると、別の考え方をするんでしょうか。
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建物に欠陥があった場合、その建物が完成したか否かで法律構成は大きく異なる。
完成前なら請負代金の支払いを拒める。
完成前なら請負契約を解除できるが、完成後なら契約解除はできない(民法634条)。
完成前なら債務不履行責任になるが、完成後なら瑕疵担保責任になる。
このように建物が完成したか否かで大きく法律構成が異なる。ところが、どういう場合を「完成」といえるのか。
注文通りに建築が修了すれば「完成」したことについては異論はない。しかし、注文通りに建築されていない、あるいはあちこちに欠陥がある。こういう場合でも「完成」したといえるのだろうか。
まず、工事が「予定された最後の工程まで一応終了しているか否か」を判断する必要がある。最後の工程を終えていなければ、「完成」といえないことは明らかである。
しかし、欠陥だらけでも、ともかく工程表を終了してしまえば、「完成」といえるかのだろうか。
例えば、ガス、水道、電気工事なんか使用できない場合はどうか。
こういう場合は、そもそも住居として使用できないのだから、いくら工程表を一応終了しているといっても、「完成」とは言えないだろう。
逆に、ともかく住居として使用できるなら、欠陥があっても、「完成」といえる場合が多い。例えば、外壁の色が違うとか、建築基準法の関係で3階に行く階段を梯子にしてしまったとか。こういう場合は、「完成」といえるだろう。
結局、判断基準としては、「工事が予定された最後の工程まで一応終了していて、かつ、住居として使用できるレベルに達しているか否か」によることになろう。
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http://www.mori-law-office.com/fudousan/index.html
田舎ならともかく、中古物件が流通している都会なんかでは、建物は、永年にわたって、いろんな人たちの間を転々することが珍しくありません。
中古物件に瑕疵があれば、直接の売り主に責任追及するのが普通でしょうが、その売り主が資金繰りに詰まって売買した場合とか競売で落札した場合なんかは、責任追及することは事実上困難です。
こういう場合、その建物を設計した人や、建築した人は、どこまで責任を負うのか、という難しい問題があります。
購入者からすれば、できれば、建築会社とか設計士なんかに責任追及できれば、したい。購入者からすれば、自分で欠陥住宅建てておいて、最後まで責任を持つのは当然だろう、と考えるでしょう。
しかし、設計事務所や建築会社からすると、「直接の取引の相手方以外にも責任を負わされたんじゃたまったものじゃない、建築関係者は、永久に賠償責任のリスク負担しろというのか」となります。「大体、中古住宅というのは、そういうリスクがつきもので、それで納得して買ってるんじゃないのか?」と建築会社なんかは考えるでしょう。
これについては、有名な判例があります。
マンションを譲り受けた所有者からマンションを設計・建築した設計士や建築会社に不法行為に基づく賠償責任を求めた判決で
1、福岡高裁は、一審同様、次のように述べて原告の請求を棄却しました。
「違法性が強度である場合、例えば、請負人が注文者等の権利を積極的に侵害する意図で瑕疵ある目的物を製作した場合や、瑕疵の内容が反社会性あるいは反倫理性を帯びる場合、瑕疵の程度・内容が重大で、目的物の存続自体が社会的に危険な状態である場合等に限って不法行為が成立する余地がでてくる。」
ところが最高裁は、次のように述べて高裁の判決を破棄し、差し戻ししました。
「建物の建築にかかわる設計者、施工者および工事監理者は、建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者の生命・身体又は財産が侵害された場合には、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである」
2、ところが、第一次上告審判決を受けて審理をやり直した差戻後の福岡高裁は、次のように述べて第1審原告による不法行為に基づく損害賠償請求をまた棄却しました。
「建築基準法やその関連法令に違反したからといって、それだけでは直ちに建物の基本的な安全性を欠く瑕疵」に当たるとはいえない。
「居住者の生命、身体又は財産に対する現実的な危険性が生じているとはいえない」
3、この第一次差戻審判決に対して、さらに上告がありましたが、最高裁第1小法廷は、次のように述べてまた第一次差戻審判決を破棄して、事件を再度福岡高裁に差し戻しました(最判平成23年7月21日)。
「建物としての基本的な安全性を欠く瑕疵」とは、「これを放置すれば、いずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的は安全性を損なう瑕疵に該当すると解する。将来危険が現実化する瑕疵も含まれる」
例えば、
① 外壁が剥落して通行人の上に落下したり、開口部、ベランダ、階段等の瑕疵により建物の利用者が転落したりするなどして、人身被害につながる危険があるとき、
② 漏水、有害物質の発生等により建物の利用者の健康や財産が損なわれる危険があるときには、
建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する。
4、この第二次上告審判決を受けて、2回目の差し戻しを審理した福岡高裁は、設計者や施工業者の不法行為を一部認める判決をしましたが、その認容額はマンション所有者の請求額の10%程度でした。
福岡高裁は、軽微な瑕疵についてまで工事業者や設計者に長期にわたって責任を負わせるのは公平さを欠くと考えるのに対し、最高裁は、消費者保護に一歩踏み込んでいると考えられます。
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田舎ならともかく、中古物件が流通している都会なんかでは、建物は、永年にわたって、いろんな人たちの間を転々することが珍しくありません。
中古物件に瑕疵があれば、直接の売り主に責任追及するのが普通でしょうが、その売り主が資金繰りに詰まって売買した場合とか競売で落札した場合なんかは、責任追及することは事実上困難です。
こういう場合、その建物を設計した人や、建築した人は、どこまで責任を負うのか、という難しい問題があります。
購入者からすれば、できれば、建築会社とか設計士なんかに責任追及できれば、したい。購入者からすれば、自分で欠陥住宅建てておいて、最後まで責任を持つのは当然だろう、と考えるでしょう。
しかし、設計事務所や建築会社からすると、「直接の取引の相手方以外にも責任を負わされたんじゃたまったものじゃない、建築関係者は、永久に賠償責任のリスク負担しろというのか」となります。「大体、中古住宅というのは、そういうリスクがつきもので、それで納得して買ってるんじゃないのか?」と建築会社なんかは考えるでしょう。
これについては、有名な判例があります。
マンションを譲り受けた所有者からマンションを設計・建築した設計士や建築会社に不法行為に基づく賠償責任を求めた判決で
1、福岡高裁は、一審同様、次のように述べて原告の請求を棄却しました。
「違法性が強度である場合、例えば、請負人が注文者等の権利を積極的に侵害する意図で瑕疵ある目的物を製作した場合や、瑕疵の内容が反社会性あるいは反倫理性を帯びる場合、瑕疵の程度・内容が重大で、目的物の存続自体が社会的に危険な状態である場合等に限って不法行為が成立する余地がでてくる。」
ところが最高裁は、次のように述べて高裁の判決を破棄し、差し戻ししました。
「建物の建築にかかわる設計者、施工者および工事監理者は、建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者の生命・身体又は財産が侵害された場合には、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである」
2、ところが、第一次上告審判決を受けて審理をやり直した差戻後の福岡高裁は、次のように述べて第1審原告による不法行為に基づく損害賠償請求をまた棄却しました。
「建築基準法やその関連法令に違反したからといって、それだけでは直ちに建物の基本的な安全性を欠く瑕疵」に当たるとはいえない。
「居住者の生命、身体又は財産に対する現実的な危険性が生じているとはいえない」
3、この第一次差戻審判決に対して、さらに上告がありましたが、最高裁第1小法廷は、次のように述べてまた第一次差戻審判決を破棄して、事件を再度福岡高裁に差し戻しました(最判平成23年7月21日)。
「建物としての基本的な安全性を欠く瑕疵」とは、「これを放置すれば、いずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的は安全性を損なう瑕疵に該当すると解する。将来危険が現実化する瑕疵も含まれる」
例えば、
① 外壁が剥落して通行人の上に落下したり、開口部、ベランダ、階段等の瑕疵により建物の利用者が転落したりするなどして、人身被害につながる危険があるとき、
② 漏水、有害物質の発生等により建物の利用者の健康や財産が損なわれる危険があるときには、
建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する。
4、この第二次上告審判決を受けて、2回目の差し戻しを審理した福岡高裁は、設計者や施工業者の不法行為を一部認める判決をしましたが、その認容額はマンション所有者の請求額の10%程度でした。
福岡高裁は、軽微な瑕疵についてまで工事業者や設計者に長期にわたって責任を負わせるのは公平さを欠くと考えるのに対し、最高裁は、消費者保護に一歩踏み込んでいると考えられます。
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